USドルが紙切れになる日

ここのところいろんなものに興味を持っていて、猛烈に本を買い漁って読んでいる。
読むスピードが追いつかなくて未読は積み上がるばかりだが、その中で最優先で読んだ本の一つが、三橋貴明著の「ドル崩壊!」だ。

以前より田中宇のメールマガジンでは、ドルの崩壊が起こるだろうと早くから予測はされていたが、実際の所読んでてよくわからなかった。言われてみれば確かに起こるかもしれないが、なぜそうなるのかわからないし、ドルが崩壊なんてなんだか実感がわかない。
そんな感じだった。

ところが、本書

は一般人には難解な経済的な解説、特に複雑怪奇な金融商品の解説をを懇切丁寧にわかりやすく書いてあり、なるほどそういうことだったのか。と、なんとなく理解できるようになった。
本書では全ての事実にニュースソースが付けられている。我々の目に付く記事を使いつつ平易な言葉で解説されているため、全くの金融素人な私にもとてもわかりやすかった。

サブプライムローン問題の仕組み、そしてそのリスクがいかに広く深く、リスクをリスクに見えないよう偽装して広まったのか。
そのため、世界中の金融機関に静かに深く浸透していった様子。
それとともに背筋が凍るような話しも書いてあった。
これはもうアメリカの金融資本による、金融テロではないのか?というのが読後の感想だ。
読み終わったのはおとといだが、昨日から株の大暴落が始まり、円が急騰した。
もっと早く読んで、もっと早くレビューも書きたかったが、始まってしまったものは仕方がない。

サブプライムローンの問題が表面化した時、なぜそれが問題になるのかがよくわからなかった。
単に金を貸し借りした当事者同士の問題だろう。と。
ところが実態はそうではなかった。
ちょっと考えれば、借りてから3年間は低利で、3年後から利子が二ケタに跳ね上がるようなローンなど、契約する方がおかしいのは言うまでもないだろう。
そもそも、サブプライムローンというのはプライムローン(信用・支払い能力のある層へのローン)に対する対語で、支払い能力に疑問のある層に対するローンという意味で、しょっぱなから支払い能力に疑問のある層に、高金利の貸し付けを行う商品を出す時点で間違っている。
だから、サブプライムローンというのはそもそもからして、不良債権を大量生産するローンだったといえる。

それでも当時それが正当化されたのは、住宅価格バブルになってたからだ。
サブプライムローンを最初の3年間で低利で借り、3年間で値段の上がった住宅を売り、キャピタルゲインを狙いましょうというのが売り文句だったらしい。
まったく呆れるばかりの阿呆である。日本のバブルの教訓を何も学ばなかったのだろうか。
しかし、ここまでで終わっていれば、単に夢を見た人たちが損をするひどい商品というだけで済んだ。

さあ、ここから金融マジックが始まる。
住宅バブルに頼り切った危険な商品のサブプライムローンを、薄くスライスし、中が見えないようにおいしそうな衣をまぶし、カラッと油で揚げて、食べやすいように塩をひとつまみ振ったような債券に変え、安全で高金利(高リターン)な投資商品として世界中にばらまいたのだ。
ITバブルが崩壊した後、金余りに悩んだ投資家・金融資本がこれにとびついて資金を流し込み、資金を得た住宅ローン会社はさらに新たなサブプライムローンの借り手を量産するという循環に入った。
こうして、アメリカの住宅バブルに依存した危険な金融商品が、世界中の金融機関に行き渡る事となる。
そしてついに住宅バブルがはじけ、その結果・・・

というのが本書の内容のつかみだ。

世界中のこういったデリバティブ市場にかかってるカネは、全部で大体600兆ドルぐらいあるらしい。
円にすると6京円だ。
6京円!?
京円ていう単位自体がそもそもわからない。
兆にすると、60000兆円だ。
もはや1光年と同じぐらい実感がない。

さて、仮にこのカネの1%が不良債権化したとしよう。
そうすると、世界中でだいたい600兆円の不良債権ができることになる。
ちなみに10/7時点でのIMFの試算によると、サブプライムローン関係の損失は、世界全体で約140兆円になると出ている。
これはあくまで試算でしかない。実際、4月時点の試算額である約95兆円から150%も増加している。
これで底を打った感がないので、総損失はもっと増えるだろう。

とはいえ、世界全体ですでに140兆円もの損失が出ているのは事実であり、これはもう思考停止する数字だ。
現時点ですでにこの金額なのだ。
EU諸国はサブプライムローン問題の直撃を受け、アイスランドなどはすでに破綻寸前にまで追い込まれている。
もっと恐ろしいのは、不良債権を買い上げているFRBが財政破綻をきたしたり、米国債が債務不履行になる恐れがある事だ。
こうなるとアメリカが財政破綻をおこし、基軸通貨であるドルが紙くずと化す。
そしてドルベッグを続けてる諸国が耐えきれなくなり破綻し、その影響はどこまでも続く可能性が高い。
日本は輸出国であり、買ってくれる国がないとどうしようもない。

ただ唯一の救いは、世界の先進国の中で日本のみがサブプライムローン問題から受けた被害が比較的軽微だったという事だ。
週末にあるG7で、日本が世界の救世主たりうるかどうか見守る必要がある。

事はすでに金融界のみの大騒ぎではすまなくなりつつある。
実体経済を直接グーで殴られたような、そんな影響がこれから各所で加速度的に見られるようになってくるだろう。
ドルが破綻したとしたら、どう自衛するのか。
それを我々個々人が真剣に検討する段階に入ってきていると言えるだろう。
待ったなしの問題。これは対岸の火事ではない。

どうしてこんなことになったのか、この問題をどれだけ真剣にとらえる必要があるのか。
それを考える時に本書

は大きな助けとなるだろう。

過去記事ランダムピックアップ

Loading…

関連記事:

USドルが紙切れになる日

USドルが紙切れになる日” への2件のフィードバック

  1. 公家 のコメント:

    最近ちょうど経済の話題で熱くなってた所です。
    これは笑えないでしょ。
    他人事じゃないもんね。マジで。
    てことで本屋で見かけたら手にしてみます。

  2. 疾風 のコメント:

    これはマジでシャレにならんね。
    日本では取り付け騒ぎにまではなってないけど、世界のニュースは刻々と深刻化していってる。
    座して待ってると、大衆がパニックになって道連れにされるかもしれないから、そうなる前になんらかの自衛の手を打っておいた方がいいように思う。
    俺としてはひとまずL$を引き上げて円に換えるw

コメントを残す